夏休みの魔法


楽屋に戻り、他愛もない話をしていた。


…もう、今しかない。


陽汰くんと話している蒼をこそっと盗み見ると、目があった。


すぐにそらされたけど、その瞳は頑張れって言ってくれていた。


うん、頑張るよ。


緊張で、手足が震える。


でも言わなきゃ。


「あの」


ああ、声までもが震える。


「どうした?」


水月くんが、あたしを見る。


「…千来?体調悪い?」


夕哉くんが心配そうに言う。


その声で、みんながあたしを見た。


「……みんなに、言わなきゃいけないことがあります」


下を向くな、顔を上げろ。








「僕は……いえ、あたしは、女です」