夏休みの魔法


「…すげぇ…」


しばらくは口が聞ける状態じゃなかった。


誰もが、あの子の演技に圧倒されていた。



「絶対、あの子は受かるよ!」

空が瞳を輝かせて興奮していた。



「…俺もそう思う…」



というか、ただ単に、俺は。




「受かって、ほしいな…」


「珍しいな、北斗。お前が人に執着するなんて」


「ちょっと待って、水月。俺をどんな人間だと思ってるの。俺だって執着くらいするわ!尊敬する先輩だって、ちゃんといるわ!」


「木崎さんか。先輩はおいておいて、それでも一線おくだろう」


「おいてないって!だいたい、俺がお前らに一線おいてるか!?」


そこまできて、水月は初めてあぁそうか、という顔をした。



…改めて思う。

水月は俺を人間だと思ってない!