夏休みの魔法


「おはようございま~す」


楽屋に入ると、夕哉くんしかいなかった。


「おはよう。蒼と一緒なんてめずらしいね」


「たまたま会ったんですよ~」


「夕哉、今日のスケジュールってなんだった?」


ドサッと荷物を置きながら、蒼が聞く。


「今日は俺たちが書いた詩にどんなメロディーをつけるか、作曲家さんと打ち合わせ。午前中には終わると思うよ」


「…ふぅん」


「自分から聞いておいて、興味なさそうだな」


夕哉くんは苦笑する。


蒼は、夕哉くんの前では子どもっぽくなる。


「おっはよ~!」


「おはようございます」


空くんの、朝からテンション高いのにももう慣れた。


「はよー」


「おはよう」


陽汰くんは、朝は弱い。


水月くんはいつでもピシッとしている。


…ようやく、みんなの特徴掴んできたのに。


今日でお別れかぁ…。


「千来ちゃん、どうしたの?」


空くんがあたしの顔を覗き込む。


「なんでもないですよ、打ち合わせ、頑張ってくださいね」


「任せといて~!最高の歌、作るから!」


そう言って笑うみんなの顔は、とてもまぶしかった。