夏休みの魔法


ガチャッと、ドアが開く音がした。


入ってきたのは蒼だった。


「北斗、千来は…」


「寝てる。靴擦れと軽い捻挫はしてたけど、とりあえず大丈夫」


「そっか、よかった…」


俺の肩に寄りかかって眠る千来を見て、心から安堵したような、蒼の表情。


「…蒼、お前、千来とどういう関係?」


いつかもしたような質問。


あのときは、はぐらかされた。


「………今さらなんか言ってもしょうがないのは分かってる。けど、それは俺からは言えない。言うんだったら、こいつが言う」


「……あっそ。どうせただの関係じゃないんだろ」


「まあ、そうなるけど」


そこまで言うなら、言ってしまえばいいのに。


もう今さら騙されてたなんて、蒼を非難することなんてないのに。


「…千来、頼むな」


俺はそっと千来を寝かせ、楽屋を出た。