眠る千来は、ウィッグのため髪が長い。
その寝顔を、俺は見たことがあった。
2年前、夏休み。
考え事をしていたら迷い込んだ、大きな公園。
小川の横を通りかかると、女の子が子どもたちとボールで遊んでいた。
あまりにも楽しそうだったから、目が離せなかった。
すると、ボールが風にさらわれて、小川に入ってしまった。
女の子がサンダルを脱ぎ、小川に入る。
無事にボールを取って、小川から出ようとしたとき。
足を滑らせて、前に転んだ。
俺はとっさに、その子のもとへ駆け寄った。
…その子は、一瞬とても驚いた顔をした。
でも、すぐにふわりと微笑んだ。
心配してくれて、ありがとう、と。

