夏休みの魔法


抱き止めたとき、勢いを殺しきれなくて尻餅をついた。


それでも、ケガはさせてないと思う。


抱きしめた千来の体は、小刻みに震えていた。


もう何も見なくてすむように、隙間をつくらないように抱きしめる。


見上げると、男が警察に取り押さえられていた。


そして、夕哉がこっちを見下ろして笑っていた。


それに、俺も笑い返す。


そのとき、警察に肩を掴まれた。


「君、少し話聞かせてもらっていいかな」


…そりゃあ、話さなきゃいけないってことくらい分かるけど、今は千来を優先させたかった。


「すみません、後にしてもらっても…」


「俺らが話します」


いきなり入ってきた声のほうを見ると、COLORFULのみんなが立っていた。


蒼が、近づいてくる。


しゃがんで、千来の頭をポンポンとした。


「よく頑張ったな」


千来は顔を上げて、蒼を見るとこくんっと頷いた。


「北斗、こいつ頼むな」


「言われなくても」


俺は千来を、横抱きにして立ち上がった。


いわゆる、お姫様抱っこ。


「ちゃんと首に掴まってろ」


そう言うと、案外素直にしがみついてきた。


…よっぽど怖い思いしたんだな。


早く休ませてやろう。


警察のほうはみんなに任せて、俺は楽屋に向かった。