夏休みの魔法


吹き抜けの場所、二階の行き止まりで、手すりにつかまりながら千来は立っていた。


俺の周りには、警察官が集まってきていた。


「おい、あの女の子の後ろにいるんだろ!?」


「ああ、後ろから回っているやつがいるが…」


二階で、犯人が捕まるのを待つしかない。


…そんなの、待てるか。


「千来、そこから飛び降りろ!」


「君っ、何言って…」


千来は、明らかに不安そうな表情をした。


二階からここまでの高さは、そうたいしたことはない。


「飛び降りても死にはしない!…大丈夫だ、受け止めてやるから!」


そのとき、後ろに人影が見えた。


「千来っ!」


焦って名前を呼ぶと、千来は手すりをぐっと握りしめた。


━━怖がってる。


俺は、大きく両腕を広げた。


「大丈夫、絶対受け止めてやる!俺を信じろ!」


千来が、飛び上がって手すりに片足をかける。


俺は、知らないうちに微笑んでいた。


「…千来。大丈夫。お前には、ケガ一つさせやしねぇよ」


その、瞬間。


千来が、飛び降りた。