夏休みの魔法


走って、走って、千来を探す。


途中、何人も警察官とすれ違った。


そのたびに声をかけられたけど、頭の中は千来のことでいっぱいで、気にしている余裕なんてなかった。





…どれだけ、走り回っただろう。


いい加減息が切れてきた。


男の俺でもこんなに息が切れているのに、千来は…。


そう思うと、立ち止まることなんてできなかった。


千来、千来。


騙されてたとか、傷つけられたとか、そんなこと今はどうでもいい。


ただ、千来が無事なら…。


ブーッブーッと、スマホが鳴った。


「水月!?」


『北斗、一階の中央、吹き抜けの場所に行け。千来はその二階にいる』


「二階…って、確か…」


『ああ、行き止まりだ』


「…っ…!」


『だから夕哉が警察を連れて二階から……おい、北斗、聞いているか?北斗!』


水月の言葉を、最後まで聞けるはずもなかった。


一階中央、吹き抜けの場所。


俺はそこに向かって、ただ走った。