一旦会話が終わった後、俺はすぐにスタジオから出ようとした。
それなのに。
「北斗!どこ行くつもり?」
夕哉に止められた。
「そんなの決まってる、千来を見つけにいく」
「北斗くん、気持ちは分かるけど、君まで出てしまったら…」
プロデューサーさんが、申し訳なさそうに言う。
それでも俺は耳を貸さず、スタジオの出入り口に手をかける。
「北斗!」
夕哉が、俺を呼ぶ。
「…じゃあ…じゃあどうしろって言うんだよ!大人しくここで待ってろって言うのか!?千来を危険な目にあわせて!?」
…あれだけ嫌だと思っていた千来のことなのに、どうしてこんなにもムキになっているんだろう。
「助けに行くって言ったんだ、俺は行く!」
「…それは、そう言っちゃったから?だから、助けに行くの?」
…そう言ってしまったから?
だから、助けに行く…?
違う、そんなんじゃない。
そうじゃなくて、もっと、こう。
………ああ。
そうか。
そういうことなのか。
「大切だから、守りたいと思うから。…だから、俺は千来のところに行く」
ああ、なんて遠回りをしたんだろう。
心は、ずっと叫んでいたというのに。

