夏休みの魔法


『ひっ……やっ、来るなっ…!』


「千来!?」


ボソボソと、男の声が聞こえる。


『…きゃあっ!』


千来の叫び声の後、ガシャンッという音がした。


「千来、どうした、おい!」


『…大丈夫、転んだだけ…』


「…千来、」


『…やだやだ、来ないで!…助けて…』


その声を聞いて、俺は叫んだ。


「とにかく走って逃げろ!絶対助けてやる!!」


電話の向こうで、息を飲む音が聞こえた。


その後、足音が聞こえた。


きっと走っているのだろう。


『…北斗、くん…?』


息を切らしながら、問いかける千来。


「ああ、とにかく今は前だけ見て走れ!あと電話は通話にしてろよ、いつでも安全確認できるように」


『分かっ…た…』


「大丈夫、絶対に助ける」


だから、頼むから。


手遅れなんてことには、ならないでくれ…!