夏休みの魔法


どれだけコールしても、千来は出ない。


「出ろよっ…頼むから…!」


蒼が、すがるようにスマホを握りしめた。


…早く出てほしいと思っているのは、蒼だけではない。


俺を含め、みんなの表情が厳しい。





…何回コールしただろうか。


ピッ…と、通話に切り替わった。


「…っ、千来!?」


『………………』


何も聞こえない。


みんなの顔に、緊張が走る。


「千来、聞こえてるなら返事しろ!」


『……はぁっ、はぁっ…。…あ、お……』


酷く息が切れていた。


『……怖い……助けっ…』


「今どこにいる!?」


『…六階…。なんか、男の人が、追っかけてくる…!』


間違いない、千来が危ない…!