夏休みの魔法


千来から視線を外し、再びカメラを見た。


もう暑くない、クラクラしない。


いつもと同じ、この感覚。


なあ、千来。


しっかりそこで見てろよ?


その瞳に、俺が惹かれて惹かれてしょうがなくて、大嫌いな瞳に、焼き付けろ。


笑うから。





お前が嫌いだと言った、完璧な笑顔で、笑うから。





ほら、綺麗だろう?


「おっ、いいね~!それそれ!」


完璧なんだから、当然だ。


「調子上がってきたね!」


フラッシュが、勢いよくきられる。


…誰も、気づきはしない。


これが本当の笑顔じゃないなんて。


だからこれでいいんだ。


気づかないんだから、どんな顔をしても同じだろう?





だから俺は、お前が嫌いな顔で笑う。














お前だけが、気づいてくれる顔で笑う。