千来から視線を外し、再びカメラを見た。
もう暑くない、クラクラしない。
いつもと同じ、この感覚。
なあ、千来。
しっかりそこで見てろよ?
その瞳に、俺が惹かれて惹かれてしょうがなくて、大嫌いな瞳に、焼き付けろ。
笑うから。
お前が嫌いだと言った、完璧な笑顔で、笑うから。
ほら、綺麗だろう?
「おっ、いいね~!それそれ!」
完璧なんだから、当然だ。
「調子上がってきたね!」
フラッシュが、勢いよくきられる。
…誰も、気づきはしない。
これが本当の笑顔じゃないなんて。
だからこれでいいんだ。
気づかないんだから、どんな顔をしても同じだろう?
だから俺は、お前が嫌いな顔で笑う。
お前だけが、気づいてくれる顔で笑う。

