「北斗くん、もう少しふんわり!」
「うーん、今日調子悪い?」
「儚げな表情して!」
…出される指示に、応えられない。
なんで、どうして。
なにがこんなにも、俺を掻き乱すんだ。
いつも通りやっているはずなのに。
たかれるフラッシュが眩しい。
ライトが暑い。
クラクラする……。
ふと、視線をカメラから外した。
女の子と、目があった。
それが千来だと気づくのに時間はかからなかった。
…あの女の子だ…。
そんなことを思ったのは、一瞬だけ。
あいつだ、千来だ。
千来が、こんなにも俺を掻き乱すんだ。
ああ、そうだ。
最初っからそうだっただろう?
何を忘れていたんだ。

