ー北斗sideー
千来にメイクをしてもらった。
唇をなぞっていた感覚が消えたから、終わったんだと思って目を開けた。
そしたら、予想外に近かった千来の顔。
…どうしてか、分からない。
そのときの千来は、強い瞳をしていなかったのに。
千来から、目がそらせなかった。
…顔が近すぎたせいだろうか、不意に、変な感情がうまれた。
━━━キスしたい。
こんなことを思ってしまうなんて、俺はもう末期だ。
タイミングよく桜木さんが来てくれて助かった。
あのままだったら、俺は間違いなく……。
考えるだけで顔が赤くなる。
千来の顔をまともに見れなかった。
いや、そもそもなんでそんなことを思ったんだ。
千来のことは好きじゃない。
騙してた、そんな人を…好きになんてなれるもんか。
“……本当に?”
湧き出てくる言葉に、想いに。
俺は蓋をした。