夏休みの魔法


ズキン、と、胸が痛んだ。


北斗くんが完璧な顔を作ってから、撮影はスムーズに進んだ。


…嫌だ、見たくない。


そんな顔は、見たくない。


「千来?どうした」


硬直してしまったあたしに、夕哉が声をかける。


「…なんでもありません。…少し、外してもいいですか」


ここにいたくない。


北斗くんのあの顔を見たくない。


「いいけど…早く帰ってこいよ」


「はい」


一刻も早くここを出たくて。


でも走ったら変に思われるから。


早足で、スタジオから出た。