夏休みの魔法


どうしようと焦っていると。


「桜木さん、こいつ胸んとこに傷があるんですよ。だから、そういう服は、ちょっと…」


「そうだったの?ごめんなさいね、今違うの持ってくるわ」


そう言って桜木さんはメイク室を出た。


「…あの、ありがとうございました」


「別に」


それだけ言うと、北斗くんも出て行った。


入れ違いに、桜木さんが戻ってきて服を渡してくれた。


メイク室で着替えていいと言われたから、そのまま着替えることにした。


「黒のタンクトップの上に薄い白い生地のドルマン、ショートパンツ…。普段着でも持ってるなぁ」


クスッと笑って、人が来る前に着替えてしまった。


そして、一緒に用意してくれたピンクのヒールをはいた。


「着替えた~?入るわよ。……あら~、似合うわね。じゃあメイクしてあげるわ」


桜木さんはあたしをドレッサーの前に座らせ、手早くメイクを施していく。


たぶん、十分もかからなかった。


「できたわ。うん、綺麗!」


目を開けて、鏡を見る。


「うわぁ~」


薄めのメイク、ピンクのグロス。


髪は夏休みの前のように腰近くまであった。


「千来ちゃんは、このくらいが一番可愛いのよ。…見せてあげておいで」


「ありがとうございますっ」