夏休みの魔法


「千来ちゃ~ん、まずは陽汰くんの唇お願い!」


「あ、了解です!」


ぼーっと考えてる場合じゃない。


あたしはあたしにできることをしなきゃ!


意気込んで、メイク室に入る。


「失礼します!」


中には女性スタッフさんが二人と夕哉くんがいた。


「あ、木崎くん?彼のお願いね!」


「はい!」


それだけ告げると、一人は夕哉くんのメイクに、もう一人は衣装室へ行ってしまった。


「千来、頼むな!」


陽汰くんがにかっと笑う。


「任せてくださいっ」


陽汰くんは制服だよね。


制服なら…学校だからあんまりメイクしたらバレちゃうから…。


「うすーくしますね」


それでもって、陽汰くんの元気さを表現してくれる色。


よし、これだっ。


選んだ色は、オレンジよりも黄色に近いグロス。


してるかしていないか、分からないくらいがちょうどいい。


ちょっと潤ってるくらいがいいかな…。


グロスを塗っている間、陽汰くんには目を閉じててもらった。


じゃなきゃやりにくいし!


「…できました!」


そういって、あたしは陽汰くんから顔を離した。


「お、おお!?これ塗ってんの!?」


鏡にぐいっと近づいて、自分の唇を見ている。


「塗ってますよ~。学校でバレない程度のものですが」


「そんなことまで考えれるなんて、千来すごいな!」


心の底から、という感じでほめられると嬉しいな…。


「ありがとうございます!」