夏休みの魔法


「ああ、ついにこの日が来てしまった…」


今日は朝から仕事。


COLORFULの楽屋でなぜか嘆いているのは、夕哉くん。


「どうしたんですか?」


めずらしいと思いつつ、聞いてみる。


「今日なんだよ!ついに!」


「………はい?」


こんなにテンパってる夕哉くん、初めて見たかも。


いやいや、それよりも。


「…今日って、雑誌の撮影ですよね?」


「そう!ただし、ただの撮影じゃない」


え、そうなの?


「今日はね~、女装するんだよ!」


空くんが、にっこりと教えてくれた。


「ああ、なるほど…。それでみなさんテンション低めなんですね」


夕哉くんは逆の方向行きすぎて高いけど。


「そ~。別にいいのにね、女装くらい」


「よくねぇだろ!陽汰とかが女装してみろ!?いい笑いものだ!」


「ちょっ、蒼それはひどくねぇ!?」


ああ…陽汰くんと蒼の言い争いが始まってしまった…。


それを傍観していると、ふいに肩をたたかれた。


「と、いうわけだ。よろしくな」


「水月くん?よろしくって、何がですか?」


なんだか今日はみんな主語がないな。


「前に言っていただろう、女装するときはメイクを頼むと」


「…言ってましたけど、本当に僕がしていいんですかね?」


芸能人にプロには程遠いあたしがメイク施しちゃって。