夏休みの魔法


きっと蒼は、こうなることを予想していた。


秘密を持ったあたしが、北斗くんに近づきすぎたんだ。


親しくなりすぎていた。


北斗くんに秘密がバレたところで、あたしには弁解する術なんてなかったのに。


北斗くんが素でいてくれることが嬉しくて、他のことは考えられていなかった。


蒼はいつだって、周りを見ていてくれたというのに。





夏休みの始め、START事務所に入ると覚悟を決めたあの日に、蒼も覚悟を決めていたんだ。


その覚悟は、あたしの覚悟なんかよりずっとずっと堅かったなんて、あの日のあたしは知らない。


今になって、ようやく気づくんだ。


…蒼は、あたしのためにみんなを裏切る覚悟を、本気でしていてくれたのだと。


あの日、あたしはバレたらどうするのと、蒼に聞いた。


そしたら、蒼はCOLORFULを抜けると答えた。


本気だと、思っていなかった。


そんなことになったら、あたしがすべての責任を負う。


そう思っていた。


でも、北斗くんにバレたと伝えた電話の声は、本気だった。


あたしなんかのために、本気でCOLORFUL抜ける覚悟がある声だった。