夏休みの魔法


「…お前は、女の子、なのか…?」


「……………」


千来は、何も言わない。


聞かないで、辛い、痛い。


そう思っていることは、表情を見れば容易に分かる。


でも、俺としてもここは引くことはできない。


「…女の子なのか?木崎さんとどういう関係だ?」


「……ぼく、は…」


唇を噛みしめ、耐えるような表情。


「…ずっと、騙してたのか…?」


その言葉に、千来は顔を上げ、立ち上がった。


「それはっ…」


泣きそうな顔。


どうして泣かないのかが不思議なくらい、辛そうな顔。


「……ごめんなさい…」


俺の質問に答えてくれなくて、謝るだけの千来にいらっとした。


…感情に、任せてしまったんだ。


「ごめんなさいってなんだよ!」


バンッと机を叩いて、立ち上がる。


「女の子なんだろ!?木崎さんの娘なんだろ!?」


ほとんど叫んでいる状態で、千来に近づく。


条件反射で、俺が一歩近づくと、千来は一歩後ずさる。


「答えろよ…。俺たちを騙してたくせに!」


千来の後ろには、もう逃げ場がない。