夏休みの魔法


しばらく楽屋で椅子に座ってダラダラと話していた。


すると突然、木崎さんが忘れ物をしたと言って、楽屋を出ていった。


残されたのは、俺と千来。


…直感的に、思った。


あの写真のことを話すのなら、今しかない。


そう思ったのが早かったのか、気づいたら俺はしゃべりだしていた。


「千来、聞きたいことがあるんだけど」


それまで向かいの椅子に座って雑誌を読んでいた千来が、視線をこちらに向けた。


「なんですか?」


俺は何も言わず、持っていたカバンからファイルを取り出す。


そして、その中に入っていた一枚の写真を、千来の前に置いた。


その瞬間、明らかに千来は動揺した。


「…これ…」


「お前の部屋にあった写真。…勝手に持ってきたのは、本当に悪かったと思ってる、ごめん」


そう言って、俺は頭を下げた。


「…いえ…」


か細い声が、頭の上から聞こえる。


頭を上げ、千来を見据える。


「…千来、今から聞くことに正直に答えてほしい」


怯えた瞳。


その瞳に、ズキリと胸が痛む。