夏休みの魔法


目の前には、明らかに驚いた千来の顔。


「…すみませんでした…」


ふいっと視線を外す、千来。


その姿に、罪悪感が募る。


俺はどうしたい、なにがしたい?


瞳を閉じて、考える。


千来を傷つけたいわけじゃないはずだ。


千来を否定したいわけじゃないはずだ。


…それでも、否定したい。


俺のなかに、勝手に入って荒らしていく存在を。


千来を、否定したい。


頭の中がぐちゃぐちゃになって、胸がズキズキと痛んで、息が、苦しくなって。


…すべてが、どうでもよくなって。


すっと、瞳を開けた。


もう頭はすっきりしている。


胸も痛まない。


息が、ちゃんとできる。


なんだか急に、笑えてきた。


今まで考えていたことすべてが、意味をなさないと思えてきた。


そうだ、なにも考える必要はない。


思った通りに行動すればいい。


たとえそれが、千来を傷つけることになったとしても。


それでいいんだ。


俺は、俺をかき乱す邪魔者を排除すればいい。














ほんの少し、ちくりと痛んだ胸は、気づかないふりをした。