夏休みの魔法


気づけば、撮影は休憩に入っていた。


「っはー!すごいねぇ、木崎さん!」


固まってしまったのか、空が体を動かしていた。


「ああ、さすがだな。見習うことが多すぎる」


水月が冷静に分析する。


「俺たちも、あんな演技できるようにならなきゃな」


みんなを励まして、気持ちを高ぶらせるのは夕哉の役目。


「だよな~!!」


みんながそれぞれ感想を言い合っているなか、俺はどうしても話に参加できなかった。


「…北斗くん!」


「えっ?」


呼ばれて振り向くと、千来が俺を見ていた。


「ぼーっとしてましたけど、大丈夫ですか?」


「ああ…平気」


そう言って、すっと千来の横を通り過ぎた。


…そっけなかった、かもしれない。


けど、これでいいんだ。


これ以上、俺をかき乱されてたまるか。


「COLORFUL~、お疲れさま!」


木崎さんが、声をかけてくれた。


「お疲れさまです!」


「すごかったです、まだ撮影あるんですよね?」


「今日はまだあるぞ~」


にこにこしながら言う木崎さんは、千来のことを知っていて隠しているんだろうか。


…ダメだ、今は、まだ考えるな。


「じゃあ俺、まだ見学していてもいいですか?」


このあとの予定もない俺は、思わずそう聞いた。


「おお、大歓迎だ!」