夏休みの魔法


「そうだ、優来、写真見せてよ」


「家族写真?いいよ」


えっと、確か机の棚のところに差し込んでおいたっけ。


蒼がいきなり部屋見せてとか言うから!


「…あれ、ここに入れておいたはずなんだけど…」


棚に置いてある雑誌やらなんやらをすべて出す。




「うそ…」


「どうした?」


あたしは蒼を振り返った。


このときのあたしは、泣きそうな顔をしていたと思う。






「…写真が、ない…」





確かに差し込んでおいたはずの写真が、その場になかった。


「…まさか…北斗、か?」


蒼は驚いた顔をした。


「北斗はずっとそこにいたし、なくなったなら…北斗しか、考えれない」


「どうしよう、あの写真見ちゃったら…あたしが女の子だってバレちゃう…」


「……とりあえず、明日は木崎さんの撮影現場に行くんだ、お前はいつも通りにしてろ。何かあるとしたら北斗からだ」


「うん…」


頷いたものの、不安で仕方がなかった。