夏休みの魔法


…本当の、あたし…。


「…本当の北斗くんを見て、思ったことはたくさんある。そのどれもに、あたしは惹かれた」


少しずつ、自分で確認しながら話す。


「メディアの前では苦しそうな表情とか見せないのに、メンバーには素でいるんだな、とか、すっごく努力してるんだな、とか」


蒼は、黙って聞いててくれる。


「…それでも、一番思ったのは…傲慢かもしれないけど、すべてを受け入れたいと思った」


メディアの前の北斗くんも、メンバーにしか見せない本当の北斗くんも。


「どんな北斗くんでも、それが如月北斗という一人の…あたしが、好きになった人間なら。そばに、いたい」


ああ、そうか。


これが、あたしのほんとの気持ち。


…気づいてた、最初から。


あの夏休み、出会ったときから。


どうしてか、惹かれて仕方がなかった。


如月北斗という存在そのものに、惹かれていた。


「蒼…あたし、北斗くんが好きなんだ…」


「知ってる。…届かないとか、そんなの関係ない。本気で人を好きになることに、悪いことなんてないだろ」


「…蒼にしては、まともな意見だね」


「なんだと~!」


あたしたちは、顔を見合わせて笑った。