夏休みの魔法


「それこそウソだろ」


「なんで蒼にそんなこと言われなきゃいけないのー!」


思わず手元にあった枕を投げつけた。


「おわっ!お前…この距離で枕投げはないだろ…」


蒼だからいいの!


「あたし、別に好きな人とか、いないよ」


「…じゃあ、北斗のことどう思ってる」


「だから、北斗くんのことはファンとして好きなだけで」


「本当の北斗を知っても、か?」


「嫌いになるわけないよ」


「そうじゃなくて。恋愛として」


「有り得ない。北斗くんはあたしの手に届かないところの人だよ?それに、あたしは騙してる」


「手に届くとか騙してるとか、そういうのなしで。…本当の優来は、どう思ってる?」


…真剣な蒼の瞳から、目をそらせなかった。


いつだってそうだ。


蒼が真剣な目であたしを見ることなんてそんなにないのに、いや、だからかな。


あたしは、蒼のその瞳から、目をそらすことができない。


その瞳の前で、嘘をつくことが、できない。