夏休みの魔法


それからメンバーはみんな集まって、現在午前9時50分。

オーディションは10時から。



「そろそろ、行こうか」

リーダーの夕哉の一言で、俺たちは楽屋から出て、会場に向かう。




「…今日って、受験者何人?」

名前が書かれた紙をパラパラとめくりながら、水月が聞いた。

「50人!そっから10人にしぼるんだよ」

元気に答えたのは、陽汰。


「10人って、厳しいよな」

「そうだね~」


10人は、受ける人にとっては厳しいかもしれない。

でも、選ぶこっちも厳しい。






会場に入って、受験者を待っているとき。


ふいに、夕哉が。


「北斗、大丈夫か?」

と、心配そうに聞いてきた。


「なにが?」

自分自身、本当に何が大丈夫じゃなさそうに見えたのかが不思議で、逆に質問した。


すると、夕哉以外のメンバーも不安そうに俺を見ている。



「…最近、なんかため込んでるだろ」


夕哉の言葉に、今度はドキッとした。


バレないように、していたつもりだったのに。





「……大丈夫だよ、俺の問題だから」


まだ何か言いたそうだったみんなだったけど、受験者が入ってきたため、何も言わずに前を向いた。







そうだ、俺の問題なんだ。





誰も、解決なんてできない。










…あの子、以外は。