夏休みの魔法


気づけばいつでも隣にいてくれた、家族も同然の幼なじみ。


それが蒼だった。


そんな蒼が隣から姿を消し、あたしは心にぽっかり穴があいたように感じていた。


蒼が有名になるのは嬉しい。


でも、有名になればなるほど、会えなくなる。


離れていく。


あたしのことなんて、どうでもよくなってしまうんじゃないか。


そう思ってしまう自分が嫌いで、蒼の時間があるときはいつも遊んでいた。




…時間は、待ってはくれなくて。


中学三年の冬。


進路が、決定した。


もちろん、あたしと蒼が、同じ高校に通うことはなかった。


蒼は芸能科がある高校に進学し、あたしはいわゆる進学校と呼ばれる高校に進学した。




蒼を見ていると、時々。


夢も何もない自分が、酷く劣っている、なんの価値もない人間のように思えて、怖かった。