夏休みの魔法


「…ありがと、もう大丈夫だから」


「ん」


抱きしめてくれてた蒼の手に触れて、離れる。


「……ご飯、冷めちゃったね」

「あと少しだったし、いいだろ」

「そうだね」


あたしたちは、またご飯を食べだした。


でも、さっきみたいな沈黙はない。



「でね、希来が唯一って言っていいほどの家族写真をくれたんだ」


「へぇ、持ってきてくれたのか?」

「ううん、あたしがいない間にポストに入ってた。手紙と一緒に」


「…希来が手紙、ねぇ…」


「びっくりだよね」


姉のあたしが言うのもなんだけど、希来はいわゆる“ツンデレ”というやつだと思う。


あたしにデレるときとか、ほとんどない。


いーっつもツンツンしてて…可愛くない。


…いや、まあ一種の反抗期とでもいえば可愛いんだけど。


「なんて書いてあった?」

「え~?後で見せてあげるよ」


…説明がめんどうだから。