夏休みの魔法


「…優来」


また、名前を呼ばれた。


今度は、優しく。


「…顔、あげろ。怒ってないから」


恐る恐る顔をあげる。


そこには、少し悲しげな顔をした蒼がいた。


「俺はな、別に迷惑だとか思ってない。言っただろ、俺は優来の味方だ、何があっても」


「蒼…ごめん…」


「ちょっとは俺のこと信用しろよ、頼れよ。…なんのための幼なじみだよ」


…泣きたく、なった。


大声をあげて、まるで子どものように。


ひたすら泣きわめいて、疲れて眠ってしまうまで。



「蒼…」


「ん?」


「……全部、終わったら…また一緒に遊ぼうよ」


蒼は驚いた顔をした。


でも、優しく笑った。


「ああ…」


「昔みたいに、未来にぃと希来も一緒に」


「ああ」


「それでね、また誕生日にはお母さんにケーキ焼いてもらうんだ」

「うん」


蒼が、あたしの隣に座る。


「お父さんは、来れないかもしれないけど…休みに日にはうんと甘えてやるんだ」


「うん」


温かいぬくもりに包まれる。


「蒼…ごめんね、ありがとう。…大好き…」


「…うん、俺も」


今は、泣かないから。


だから、今だけ、このぬくもりに、浸っていたい。