夏休みの魔法


混乱した頭を振り切るように、俺は二人の前に出た。


今さっき千来を見つけ、木崎さんに気づかなかったフリをして。


この場は、それで逃れられる。


そう思ってた。


「…北斗」


なのに、俺の憧れの人は、後回しにする俺を許さないかのように、わざわざ声をかけて、もう一度、俺を振り向かせた。




「……大切なものは、形が変わっても同じだ。変わらない。それを認めて受け入れるか受け入れないかは、お前次第だ」




それだけ言って、木崎さんは去っていった。


それはどういう意味?


千来のこと?


嘘を吐いていても、それでも千来は千来だってこと?


もう、何も分からない……。


分からないけど、千来が隣にいる。


それは確かだから。


お前のおかげで、俺は笑える。