「あ、いた!千来!!…と、え!?木崎さん!?おはようございます」
北斗くんが走ってきて、お父さんに驚いていた。
「噂をすればなんとやら、だね」
「そうですね…」
「木崎さん、すみませんでした。千来がご迷惑をおかけして…」
「いや、迷惑なんかじゃないよ。ほら、早く行かなきゃいけないんでしょ?」
お父さんが急かすと、北斗くんはそうだった、ともう一度お礼を言ってから歩いて行こうとした。
あたしもぺこりと会釈してからそれに続く。
「…北斗」
お父さんの呼びかけに、北斗くんは振り向く。
「……大切なものは、形が変わっても同じだ、変わらない。それを認めて受け入れるか受け入れないかは、お前次第だ」
それじゃ、とお父さんは去っていった。
見ると、北斗くんはしかめっ面をしていた。
それでも、すぐまた歩き出した。
「…ごめんなさい、北斗くん」
「別に怒ってはいないけど。千来、俺の家までは来れたのに、何でここで迷うの?」
「だって普段来ないじゃないですか…地図見れば行けます」
「ああ、そう…。まっ、いっか。ほら、早くおいで」
北斗くんは呆れながらも笑って、あたしを待ってくれた。
「はいっ」
まさか、お父さんとの会話を聞かれていたなんて、思いもしていなかった。