夏休みの魔法


「誰から?」


「北斗くんです。また迷うからって、ここまで迎えにきてくれるそうです」


「…北斗か…。お前はほんとに北斗が好きだなぁ」


嬉しがっているのがバレたのか、お父さんがそんなことを言う。


「好きですよ、初めて会ったときから」


「……なんか、複雑だな」


なにが?


「北斗だから、恋愛としてでも、なんだっていいんだけど。やっぱり、親としてはなぁ…」


「ちょっ…!なに言ってるんですか!!」


「それは、恋愛として?それとも、後者?」


「両方です!」


れ、恋愛としてとか…!

しかも親とか、言っちゃダメって言ってるじゃん!


「…まあ、でもほんとに北斗ならいいよ」


「そういう問題じゃないですよ…」


それに…


「どうせ、騙してるんだ。たとえ恋愛として好きでも……ほんとは、好きでいる資格なんて…」


あたしには、ない。





「……手、爪が食い込むよ」


はっとして、力を抜く。


無意識にこんなにも力んでたんだ…。


「…最後には、話すんだろう?」


「…はい」


「ごめんな、俺のせいでこんなことになって」


「それは…そうだけど、でもこうでもしなかったら、ずっと誤解したままだった」


お父さんのこと、嫌ってたままだった。


「だから、後悔はしてない。それに、分かった気がするんだ。お母さんが、芸能界に入れって言った理由が」


きっと、お母さんはあたしに気づいて、見つけてほしかったんだと思う。




あたしがやりたいこと、大切にしたいことを。