2年前の夏休みに、たった一度だけ会った少女。 お互い何も知らないまま話して、別れた。 覚えているのはその子の顔と、声と、同い年の女の子ということ。 きっと東京に住んでいる、名前すら知らない少女。 俺は街から視線を外して、膝に顔をうずめた。 いつだって俺は、後にならないと気づかない。 すべてが、遅いということに。 「…会いたい」 会いたい、会いたい。 ただ、その子に会いたい。 会って、もう一度━━━……。