夏休みの魔法


下に行くと、みんなリビングにいた。


「優来…」


お母さんが、困ったような顔をした。




「…あたし、芸能事務所に入る」





みんなの表情が驚き、そして喜びに変わった。


「本当!?入ってくれるのね!?」


「う、うん」


お母さんのテンションに若干ひきつつ、答えた。


「じゃあ、未来にぃ!優来ねぇの髪切ってあげてよ!」




……は?



「任せろ!さっ、優来こっち来て」


未来にぃに腕を引っ張られて、隣の部屋に連れて行かれる。


「未来にぃが切るの!?」


「当たり前だろ。大丈夫、男に見えるようにするから」


…嬉しそうにしている未来にぃを見ると、切りたかっただけだろ、と思えてきた。



いつの間にか蒼も来て、これからのことを教えてもらった。


「とりあえず、明日オーディションがある。優来は木崎千来として受けてもらう。合格は決まってるから緊張しなくていい」


ああ、決まってるんだ…。


「最終オーディションは俺たちCOLORFULが審査員だから」


「えっ!?」


びっくりして、髪を切ってもらってるのに動いてしまった。


「優来、動かない!」

「うっ、ごめん」


未来にぃ、怖いよ!



「COLORFULは見習いのなかで最年長グループだからってのが理由な。ちなみに、オーディションは歌唱力、ダンス力、演技力の三つ。最終は自己紹介だから」



歌唱力、ダンス力、演技力…。


歌はともかく、ダンスも習ってたからいいとして。


「演技ってできなくない?」


素直な疑問をぶつければ。




「なんとかなる!」





と、素晴らしい笑顔で返ってきた。