夕飯を食べ終えたのは、8時近くだった。
千来は中学生だから危ないということで、俺が送ってくことになった。
…千来は断ったけど。
母さんは千来を気に入ったようで、また遊びにいらっしゃいと言っていた。
千来の家と俺の家はそれほど距離はない。
バスに乗って、少し歩く。
その間、会話はとぎれることなかった。
「…今日はありがとうございました。楽しかったです」
「また来いよ」
「はい、行けたら行きたいです。北斗くんも、家きてくださいね」
千来は、笑っていた。
夢の中のあの女の子と同じように。
「ああ…」
千来と別れ、きた道を戻る。
考えるのは、あの夢のこと、千来のこと。
都合の良すぎる夢。
夢の中の女の子は、千来と同じ声、同じ瞳。
もし、仮に、千来が女の子だったとしたら…俺はどうする…?
そう思って、すぐに消した。
馬鹿馬鹿しい、そんなことはあるはずがない。
こんな馬鹿なことばかり思うのは、夏だからだ。
夏休みだから、おかしいんだ。