夏休みの魔法


まあ、そりゃそうだよな、爆睡だったんだから。


「…僕、帰ります。ありがとうございました」


「え、帰っちゃうの?」


キッチンから声がした。


母さんが、こっちに戻ってくる。


「夕飯食べてきなよ」


「いえ、それは迷惑が…」


いきなりの母登場で、千来はびっくりしている。


「全然、いいわよ、北斗がお世話になってるんだし」


「お世話だなんて、そんな!僕がお世話になってるんです!」


「お世話してもらってるけどね~」


なんだかんだいって、千来は頼りになるから。


「あ、申し遅れてすみません。北斗くんの後輩の、木崎千来といいます。初めまして」


ぺこっとお辞儀をして、千来が言う。


「しっかりしてる子ねぇ。北斗の母です、よろしくね」

「よろしくお願いします!」


「じゃあ、千来ちゃんご飯食べてくよね?」


…母さん、じゃあって。

じゃあって、全く話繋がってないよ…。


「…じゃあ、お言葉に甘えさせていただきます」


千来も困惑したように笑ってるし。