夏休みの魔法


「…くと、北斗」


誰かが、呼んでる。


「北斗、起きて」


目を開けると、母さんの顔が見えた。


「おはよう、なんでみんなしてここで寝てるの」


呆れたように、笑われた。


「…お帰り…。トランプしてたら、寝てた」


「疲れてるのね。…ねえ、隣の子は誰?」


言われて隣を見ると、千来が寝ていた。


「事務所の訳あり後輩、木崎千来」


「ああ、よく最近話す子ね。…ほんとに女の子みたいねぇ」


「まあね…」


「じゃあご飯作るけど。もう6時だから、起こしたほうがいいんじゃない?」


げ、もうそんな時間か。


母さんがキッチンに行ったあと、千来を起こしにかかる。


「千来、千来、起きろ~」


「ん…」


ごろんと寝返りを打ったせいで、俺と体が密着した。


思わず、息をのんだ。


…間近で見ると、あの女の子にそっくりだ。


寝顔だから、よけいに幼く見えて、女の子に見える。


「千来~、起きろ~」


「うーん…」


うっすら目を開ける。


お、起きた?


「うわああああ!?」


真っ赤になって、俺から離れた。


おいおい、そんな驚くなよ…。


「ほ、北斗くん!?」


「おはよう、もう6時ですが」


そう伝えると、驚きで固まってしまった。