夏休みの魔法




夢を、見た。



あの女の子が出てきた。



俺に背を向けて、光の指すほうを見ている。


くるっと、女の子が振り向いた。


逆光で、顔が見えない。



でも、笑っている気がした。



唇が、微かに動く。



でもそれは、俺まで届かない。




なんて言ってるの?

聞こえないよ。



俺は動くことも、しゃべることもできず、ただその場に突っ立っていた。


女の子が、近づいてくる。


俺の頬に触れた。



もう逆光じゃない、顔が見える。



『…あたしは、あなたの一番最初のファンだから』



ドクンッと、心臓がはねた。



女の子は、笑って続ける。



『…北斗くん、大好きだよ』



え…?


今、なんて…?



なんで、俺の名前知ってるの?



『…大丈夫、迷ったら、あたしが背中押してあげる』



それだけ言って、女の子は消えた。








俺が分かったのは、声が千来に酷似していること。




そして、俺は、やっぱり忘れられないということ。







だって、あの子が好きだ。