夏休みの魔法


なんとなく重い雰囲気になってしまったところに、夏日が来た。


「お兄ちゃん、なにかして遊ぼうよ」


「なにかって…」


家のなかでできる遊びだろ?


「千来、なんかない?」


思いつかなくて、千来にふった。


「そうですね…トランプとか、ですかね」


「トランプ…」

思ったより子どもっぽくて思わず繰り返してしまった。


トランプとか、最近やってない。


「トランプ!やったぁ、石榴呼んでくる!」


夏日は嬉しそうに部屋に戻っていった。


「…なんか、幼い、ですね」

「え?」


千来の呟きがひっかかって、聞き返した。


「あ、いえ、悪い意味ではないんですけど。小5くらいだと、トランプで喜ばないと思ってたんですけど」


「まあ、そうだよな。…甘えたいんだよ、きっと」


普段から二人きりが多い。


だから、年上には甘えたいんだろう。


それが分かってるから、あまり何も言わない。


「…可愛いですね」

「だろ」


即答で答えると、また千来に笑われた。


「ほんとにシスコンですよ」


…だから俺はシスコンじゃない。