夏休みの魔法


それから話は近状報告になった。


出演したドラマの話、共演した俳優さんがどうだった、メンバーは最近こうだ…。


蒼が芸能人になってから、会えるときはこうやって話を聞かせてもらう。




「…それで、北斗なんだけど」


メンバー一人一人の話を終えて、最後は北斗くんの話だった。


そこで初めて、蒼は言いにくそうに言葉を濁した。




「…最近、また不安定なんだ…」



「不安定」。

精神的不安定な状態。


「たまに仕事が大変な時になるんだけど、夏は…だいたいそうなる」



…夏。







「…知ってる」


「え?」


蒼は目を見開いてあたしをみる。



「気づいてた。見てたら分かる」


「あいつ、仕事はカンペキにやってるぞ?俺たちにも弱いところを見せないやつなのに」




「…なんとなく、雰囲気が変わる。あたしにしか分からないと思う」


あぁ、今辛いんだな、苦しいんだなって。




あの時から、ずっと見てきたからかな?



「…そっか」


それ以上、何も突っ込まなかった。






しばらく話して、あたしたちはみんながいる下へ向かった。





芸能界に入ると、告げるために。