夏休みの魔法


「ただいま~」


「おじゃまします」


「「おっかえり~!」」


玄関を開けるなり、妹たちが駆け寄ってくる。


「こら、お客さんにあいさつは?」


「「こんにちは~!」」


「こんにちは、初めまして、木崎千来っていいます」


年下相手にも、丁寧に自己紹介する千来。


…千来はちゃんとしつけられてきたんだなぁ。

だってしっかりしてるもん、下手したら俺以上に。


年下のクセに、ハキハキしてるし、自分をちゃんと持ってるし。


そんな千来がいいなって思うんだけどっ。


…やっぱりちょっと不安になるよね、俺って大丈夫なのか。


最近は安定してきてるから…メンバーに迷惑はかけてないつもり。


…夏になると、不安定になってきてたのに。


今年は、ひどくなるなって自分でも分かってたのに。


……なのに…千来がいるからなのか、全く平気な自分。



俺の中の、あの女の子が、薄れていく感覚。





…ずっとみていたあの夢を、俺は最近みない。





もうあの子に心配かけなくていいから、いいことなはずなのに。


なのに…あの子が薄れていくのが、怖い。



好きなのに、消えていくのが、怖い。