夏休みの魔法


お父さんが、瞠目したのが分かった。


「お父さん……ごめん、なさいっ…。あたし、何も知らなくて…ひどいことばっか言って…」


「優来」


そっと背中に腕がまわった。


「ありがとう。不安にさせてばっかりで、ごめんな」


お父さんは、あたしの目を見てこう言った。





「たとえどんな噂が流れたって、絶対裏切るようなことはしていないし、しない。…俺が愛してるのは、家族だけだよ」





優しく笑うお父さんの目は、偽りを言っていなかった。


「うんっ…」


頷くあたしの頭を、優しくなでてくれた。



いつの間にか、未来にぃも近くにいて、お父さんと同じことをしてくれた。


「…頑張ったな、優来。さすが俺の自慢の妹」


「未来にぃ…」 


未来にぃを見て、ふと思った。






未来にぃの笑顔は、お父さんから受け継がれたんだって。





あたしが安心できる笑顔は、優しさは。


いつだって近くにあった。


距離が離れてても、会えなくても、心は近くにあった。



もう信じないなんて言わない。


どんな状況に置かれたとしても、お父さんはあたしたちを愛してくれてる。



それは、紛れもない事実だから。