夏休みの魔法


テレビをつけながら、黙ってご飯を食べた。


お父さんも未来にぃも、何もしゃべらない。


沈黙が、逆に怖い。




何もしゃべらずに、食べ終わってしまった。


話さなければならない。


「…ごちそうさまでした…」


食器をキッチンへ持って行って、ソファに横になろうとした。


ふいに、スマホが鳴った。

今はマナーモードではないから、普通に設定してある音楽。


誰からだろうと思ったら、ディスプレイに「高槻蒼」の文字。


「…もしもし?」


『なんだよ、出ないかと思った。つーか、声暗くねぇ?』


「別に、そうでもないと思うけど」

嘘、ほんとはちょっと暗い。


『…まあいいけど。今日、話せよ?もうチャンスないかもしれないから』


そんなことだろうと思った。


「そんなの、分かってる」

蒼に言われるまでもない。


『ならいいけど…。優来はほんとに俺を頼らないからな~』

そんなに俺って頼りない?と笑いを含んだ声で言われた。


「そんなことないけど…。これはあたしの問題だし。…ねえ、周りにCOLORFULいないよね?」

すごくナチュラルに優来って呼ばれたから、一応聞いておく。


『いないよ。もう家帰って、今部屋』


「ならいいや…」


さすがにないとは思いつつ、でも蒼ならありそうだと思って聞いてみた。