夏休みの魔法


千来の家に、木崎さんが泊まることになった。


裏口から出た俺たちは、誰にも会うことなく千来の家についた。


木崎さんのマネージャーさんは、タクシーで帰ってもらったらしい。


アパートの階段を登って、部屋の前に立つ。


「…あれ、鍵、開いてる…?」

「おい…!閉め忘れたのか!?」


ありえないと思って、思わず叫んでしまった。


「閉めましたよ!…あ…」


千来の表情が、驚きから納得に変わった。


「…ただいま~。未来にぃ、だよね?」


みんなで千来の後に入る。


「正解、おかえり。…あれ?なんか大勢だね」



出迎えたのは、にこにこと笑っている男の人だった。



……誰…?


そんな俺たちを見て、その人はああ、と笑った。


「初めまして、兄の未来です。よろしくね」


「…お兄さん!?嘘、誰かに似てる!」

「馬鹿か、空。千来に似てる以外に何がある」


…いや、ごめん、水月。

正直俺も千来以外の誰かに似てると思った…。


「…あのなぁ、失礼だから。自己紹介しろよ」

さすがに夕哉は冷静だった。