夏休みの魔法


木崎さんの曲が終わって、次はトークだった。


千来を置いて、中央に用意された椅子に向かう。


「ありがとうございました~!さあ、次はたくさんしゃべっちゃってください!」


トークへの振りは、陽汰の役目。

明るいから、話しやすい雰囲気をつくってくれる。


「いやぁ、まさか呼んでもらえるとはね…。思ってなかったから、楽しいよ」



木崎さんは座りながらにこにこと言った。


「そんなそんな…とんでもないです、大先輩なんですから!来ていただいてありがとうございます!」

夕哉が慌てて言う。


「成長したCOLORFULと共演できるなんてね、嬉しいよ」


…木崎さんは、誰に対しても親切で優しい。


俺たちみたいな見習い相手にでも。



そこがすごいと思って、憧れてて。


俺も、尊敬されるような人になりたいなって。



…俺が、こんなんだからかな。


だから、千来の気持ちを分かってやれないのかな。





『恋は盲目』


そんな言葉があるけれど。






恋でなくても、俺は盲目なんだ…。








自分のことしか見えなくて、周りにまで気を配れない。






だから、いつも、失敗する。


いつも、終わってから、失ってから気づく。