夏休みの魔法


気がしてた、じゃなくて、実際そうだったんだ。



弱い俺を、千来は知ってた。


完璧に隠してきたはずだった。


いつでも、完璧だった。





なのに、二年目の夏、今年は、なぜかそれができない。


完璧を、うまくつくれなかった。






怖かった。


自分をつくれないのが怖かった。


自分をつくって、自分でうまく自分を隠していないと、不安だった。




…本当の自分を隠していないと、芸能界に呑まれると思ったから。







そんなとき、不意に現れたのが千来だった。


千来には助けられっぱなしで、だから今度は俺が。



そう、思ったんじゃないかな…。


自分のことなのに、よく分からない。