夏休みの魔法


ぎゅっと握った拳が震える。


「…嫌だよ。会ったらどうするの」


震える声を隠そうと、強気で話したつもりだった。



「…許してあげて、ほしいの。仕事上仕方ないって、分かってあげて」


「━━嫌だっ!」



いきなり叫んだから、みんなが驚いたようにあたしを見た。



「なんで許さなきゃいけないの!ドラマとかやるたびに熱愛報道されて…。お母さんが泣いてるの、知ってるんだからね!?」




お母さんがドキッとしたように見えた。


未来にぃがあたしを止めようと口を開きかけた時。





…ピーンポーン…




玄関のチャイムが、鳴った。


「あ、俺出る」

希来が向かって、みんなの意識がそっちにいった隙に。



あたしは二階の自分の部屋に向かった。



「優来!」




下から聞こえる、あたしを呼ぶ声を無視して、バタンとドアを閉めた。