夏休みの魔法


「あ…そういえば…。…あのさ、千来…」


急に何か思い出したらしく、蒼の表情は曇った。


何かと思って、横に座った蒼を見た。


「今日なんだけど…」

「おはようございまーす!」


蒼が言いかけるのと同時に、空くんが入ってきた。


蒼はぱっとそっちを向いた。


「おはようございます」

「千来ちゃんはやーい!あーくんも早い~、一番だと思ったのにぃ」


ぶーっとほっぺを膨らます姿が、可愛らしい。


「俺はいっつも早いっつーの。そろそろ時間だし、みんな来るかな」


「うん、そうだね。…あ、ウワサをすれば!」


ガチャッと開いたドアの先には、みんなの姿があった。


おはようございますとあいさつして、いつもみたいに雑談になった。


途中で会ったから一緒に来たとか、電車が混んでいたとか。

他愛もない会話なのに、仲いいなぁと思ってしまう。




その中にはもちろん蒼もいたから、さっきの話の続きを聞くことはできなかった。




結局、蒼が何を言おうとしたのか知らないまま、リハーサルが始まった。