「あ…そういえば…。…あのさ、千来…」
急に何か思い出したらしく、蒼の表情は曇った。
何かと思って、横に座った蒼を見た。
「今日なんだけど…」
「おはようございまーす!」
蒼が言いかけるのと同時に、空くんが入ってきた。
蒼はぱっとそっちを向いた。
「おはようございます」
「千来ちゃんはやーい!あーくんも早い~、一番だと思ったのにぃ」
ぶーっとほっぺを膨らます姿が、可愛らしい。
「俺はいっつも早いっつーの。そろそろ時間だし、みんな来るかな」
「うん、そうだね。…あ、ウワサをすれば!」
ガチャッと開いたドアの先には、みんなの姿があった。
おはようございますとあいさつして、いつもみたいに雑談になった。
途中で会ったから一緒に来たとか、電車が混んでいたとか。
他愛もない会話なのに、仲いいなぁと思ってしまう。
その中にはもちろん蒼もいたから、さっきの話の続きを聞くことはできなかった。
結局、蒼が何を言おうとしたのか知らないまま、リハーサルが始まった。

