ー優来sideー
今日、8月某日、夜6時。
都内のあるスタジオで、見習いの番組収録が行われる。
そのため、今日は朝からリハーサルだった。
朝8時、いつもより少し早い時間。
早く来すぎたせいか、まだ誰もいなかった。
スタッフさんがちらほら、セットの準備をしているだけ。
どこにいればいいか分からなくて立ち往生していると、ステージのところに居ればいいよと教えてもらった。
「おっはよー」
あたしがスタジオのステージに腰掛けていると、蒼の声がした。
「おはようございます、いつも早いですね」
「なんとなく、早く来たいんだよな~。ゆ…千来も大変だな」
「…ふたりだからって、油断しないでくださいね」
優来と言いかけた蒼に、釘を打つ。
スタッフさんもいるんだから、おかしく思われる態度は避けたい。
「ああ、悪い…。つい、なぁ…」
顔をしかめて、頭をかく蒼。
小さい頃から一緒にいたんだ。
高校は違うけど、一番仲のいい友達は、蒼。
幼なじみを違う名前で呼んだり、普段と同じように接せられなかったり、蒼にも負担をかけてる。
…申し訳なく思うよ、ほんと。